1997年1月21日火曜日

青森県弘前市にお住まいのふみさんからの質問。


  こんにちは.前から疑問に思っていたことがあります.
 車を運転しているとよく「赤ちゃんが乗っています.」などとリアウィンドウに貼っている人がいますが,あれは私たちに何かの行動を促しているのですか?私はあれを見る度に「だからどうしろっていうんですか?」と質問したい衝動に駆られます.
 では,さようなら.

おこたえします。

 確かに、このような表示をしている車をよく見かけますね。
 そして、たいていは「乗っています」というだけで、直接何かを要求している様子はないようです。
 では、それをつけている人達は何を主張しているのでしょうか?

 これらの車に考えられる共通点をあげてみましょう。
 まず、表示されているもののほとんど全てがプラスチック製の既製品です。手作りであったり、紙にマジックで書いたものをセロテープで貼っているようなものは、まず見たことがありません。
 第2に、この表示は必ず車の後ろにとりつけられ、後続車に対して見えるようになっています。前側につけて先行車や対向車に見えるようになっている表示、これもまた見たことがありません。

 このことをふまえてもう少し考えてみましょう。
 このような表示をすることは交通安全の上で少なくとも必要不可欠なことではありません。そもそも、「子どもが乗っているから安全に目的地まで到着したい」というのは親としてのエゴであり、本来その本人が安全運転を心がければいいわけです。周囲の人に対して必要以上の注意を要求するのは筋違いですね。
 また本当に安全のために表示をするのであれば、先行車が急ブレーキをかけないようにとか、対向車が無理な右折などをしないようにしてもらうこと を考え、車の前側にも同様の表示をしなければなりません。実際、若葉マーク(初心者マーク)は車の前後両側につけることになっています。

 そういうことがなされていないところを見ると、結局、この表示は周囲の車に注意と安全運転をするよう呼びかけているものではない、ということになります。
 さらに、ほとんど全てが既製品を購入している点も目的意識を希薄にしているといえるでしょう。本当に安全が目的であれば、前述のように紙に「子どもが乗ってます」と書いて貼っておくだけで十分なはずです。どれもかわいい絵柄が描いてあったりする点を見ても、どうも安全のための表示ではなく、表示するための表示であるように見えてなりません。

 これらのことからいえるのは、彼らにこのような表示をさせているのは子ども自慢をしたがる親の本能であるということです。
 あの表示が主張していることは「うちにはかわいい子どもがいるんですよ」ということだったのです。そして、プラスチックのプレートに描かれたかわいい絵柄が、彼らの子どものかわいさを象徴しているのです。

 普通の人であれば、「うちのかわいい子どものために、まわりの車に安全運転をしてもらおう」なんて(よっぽど傲慢な人でない限り)まず考 えつかないでしょう。ところが、店頭でこのような商品を見ることによって、子ども自慢をしたがる親の本能が動かされ、つい買ってしまうのです。
 これも、不二家が始めたことで有名な「日本のバレンタイン・デーの習慣」と同じく、市場が市民の行動様式を支配した例のひとつといえるのではないでしょうか。

 さて、「私はそうではなく、本当に子どものためにつけているのだ」という方もいるかもしれません。そんなあなたは、当然実用本位なデザインの表示(本来、警告的なサインであるべき)を必要十分な位置すべてに取り付けているのでしょうね?

 というわけで、このような結論が出ましたので我々としては、彼らのことを「ああ、親バカなんだね」と暖かい気持ちで見守ってあげるのがよいでしょう。ふみさん、いいですか?
 私は、決して彼らが悪いとはいいません。私も将来子どもを持つことがあれば同じようなことをやってしまうかもしれません。なってみないと親の気持ちはわからないでしょうし・・・。